小児期の虐待が、その人の精子のDNAを変える
子供の時の虐待が、その人の精子のDNAを変えるという話をしたいと思います。
子どもの虐待は、あってはならないと思いますし、被害者の方は、本当に可哀そうだと思います。
追い打ちをかけるように、子供の時の被害が、大人になった時に精子のDNAの構造を変化させる形で、でてきてしまうという論文を見つけましたので、ご紹介いたします。
2018年のネイチャーのTranslational Psychiatryというコーナーに載った脳科学系の論文ですが
Exposure to childhood abuse is associated with human sperm DNA methylation
この論文は、はじめて人の心理的なストレスが精子エピジェネティック、精子のDNAの構造を変えるという証拠を発見しました。
DNAがストレスなどの影響によって、後天的に変化して、その変化が、子孫にも受け継がれるというエピジェネティクスの話です。
[aside]エピジェネティクスの説明こちら ”エピジェネティクスが、その人のDNAを変える”[/aside]
子どもの時に虐待にさらされた人の子孫は、人生全体で神経発達と身体の健康のリスクが高くなると言われています。
動物実験では、父親の環境ストレスが子孫の精子のDNAメチル化(DNAの構造が変わる)と遺伝子発現に影響を与える可能性があることを示しています。
その一つの例で、理研が行ったハエの動物実験がわかりやすいので御覧ください。

環境ストレスにより誘導された遺伝子発現上昇の子供への遺伝 発生の初期段階で、dATF-2をリン酸化し活性化する熱ショックストレスを与えると、ヘテロクロマチン構造が弛緩し、white遺伝子の転写が誘導され、眼が少し赤色になった。この状態は子供にも遺伝することが分かった。
小児期の虐待は、ヒトの血液、唾液、脳組織のエピジェネティックマークと関連しており、統計的に証明されています。
今回の研究では、虐待のレベルを、幼少期の身体的、感情的、性的虐待の組み合わせから、なし、中程度、または高と分類しました。
DNAの構造の変化を示す、DNAメチル化は、イルミナ社のHumanMethylation450 BeadChipを使用して、男性34人から採取した46個の精子サンプルを分析しました。
神経機能、脂肪細胞調節、および免疫機能に関連する遺伝子が変化
虐待によって差別的にメチル化された領域を調査したところ、神経機能(MAPT、CLU)、脂肪細胞調節(PRDM16)、および免疫機能(SDK1)に関連する遺伝子に変化(メチル化)があり、小児虐待によって差別的にメチル化された12のDNA領域を特定しました。
ちなみに、MAPTは幼少期の頭の大きさ、PRDM16には片頭痛にも関連しています。
この結果により、小児期の虐待が精子のDNAメチル化に関連していることを示唆しており、これは子孫の発達に影響を与える可能性があると結論しました。
ということで、虐待によるストレスがメチル化に影響して精子のDNAの構造を変えるという事は、驚きます。この影響された精子が子孫にどういった影響を起こすかは、今後の研究次第だと思いますが、なんらかの悪い影響が予想出来ます。
結構、父の精子がストレスに影響を受けるという論文は多いです。すでに虐待されて可愛いなのに、その子まで影響が出てるのは、さらに可愛そうな話です。
後天的に遺伝子が変化した訳ですから、なんとか、影響を受けたDNAが元に戻れるようになる治療法とかが開発される事を期待します。![]()



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